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2006/11/26

黒雲靡く生田台

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毎年恒例となっている研究室のOB会に顔を出してきた。
基本的に学祭の日程に合わせて行われている(たまに学祭は中止になるが)。
いつも夜だけ参加なのだが、今年は久々に母校まで足を伸ばしてみるコトにした。

新宿からの私鉄は高架化工事が終わって、ずいぶん変わってしまった。
大学の最寄り駅は大きく変わっていなかったが、駅からの道も若干変わった。
毎日のように食っていたラーメン屋がなくなっていたり、見慣れぬビルが建っていたり。

大学の直前の踏切の角にあったコンビニも消えていた。
その向こうには何か建物があったような気がするが今は駐車場で、
警備員室から先の急な坂道ががよく見えるようになっていた。

かつて10kgあまりの荷物を背負って駆け上がっていた入り口の坂を、
今はゆっくり踏みしめて登るが、それでも息が上がる。
坂から見える紅葉は変わらない。

キャンパスは狭くなった。
いや別に、オトナになってから幼稚園や小学校に訪れた時の感覚とは違って。
十数年前には空き地だったトコロに研究室棟が幾つか建てられていて、模擬店はその谷間を埋めている。

かつて在籍していた研究室は後に新しい棟へ移ったので、探さねばならなかった。
少々歩き回って、ようやく研究室のあるフロアに到着してドアの研究室名を見つつ歩くと
白衣を着たままの後輩と出くわしたので案内してもらった。

研究室の狭く雑然とした雰囲気は今も昔も同じらしい。
テーブルには、1970~80年代と思しき記録装置が置かれていた。
先の後輩に聞いてみると、温室の片隅から引っ張り出してきたのだとか。

高温多湿の温室でも使えるようなデータロガーが不足したため、窮余の策として使うつもりらしい。
スイッチを入れると動く。電気的・機械的な故障はないようだ。
「しかしコイツ、電源60Hzって書いてあるぞ?」「マジっすか!? 参ったな……トランス買ってこなきゃ」

実験機材にはカネがかかる。しかし二流大学に潤沢な予算など期待できない。
企業研究者から大学に戻ってきた担当教員は、いくつかの企業と共同研究契約を結び、
そのカネで、なんとか実験を続けられるようにしていた。

「学生を会社に身売りして稼いでる」と自嘲する恩師。
それでもポケットマネーの持ち出しばかりなのは、当時の学生も勘付いていた。
ここの大学の知財移転組織の活動内容は二流以下だから、よく当局と喧嘩している姿も見た。

その晩、OB会の席で師は学内起業家の話をしていた。
「ある商学部の先生も、学生にビジネスを教えるためにと自ら率先して起業したそうだよ。
私も何年かの間には、やらなきゃなと思ってるんだ。儲かるかは分からないけどね」

硬直した組織を動かすのは1人でできる仕事じゃない。
他の学部に似た考えの同僚がいるのと知って、さぞかし心の支えになったコトだろう。

東京で120年以上の歴史を持つ名門大学。かつては一流と称えられた。
しかしそんな栄光にあぐらをかいていられる時代ではない。すでに二流に転落した。

いや、そもそも理系の学部は戦後創設じゃなかったっけ?
この理系キャンパスって旧陸軍特殊部隊の研究所跡地だろ?

伝統なんて最初からないじゃないか。
虚像に乗るなんて、我が母校ながら情けない。

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OB会では一次会、二次会と飲みつつ語り、最後は結局、カラオケで朝まで時間を潰した。
とにかく元気だけどあんまりカネがない大学生らしい時間の使い方だ。

今の現役生は一回り以上も若い。もう暫くすれば、恩師の方が近くなってしまう。
数年振りに会った同輩は中年鬱になりかけたというが、せめて彼らから元気を貰ってくれれば。

さて、あの研究室の記念すべき一期生としては、彼らに何を伝えられるだろうか。

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