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2007/10/09

ひーふー感覚

20071009_s


さて、たまには近況など。

先日、なかなか器用な火傷をしてしまった。
あえて呼び名をつけるなら「蒸気式熱傷」てなトコロか。

ある夜、夜食にしようとして長柄の鍋で蕎麦(乾麺)を茹で上げ、
そのまま流し台で水道から鍋に直接水を流し込んで晒そうとしていた。
ところが、溢れた水が柄の付け根の金属部にかかって蒸発し、
そこから高温の水蒸気が柄の裏側の溝を伝ったらしい。

左手の人差し指に激しい熱を感じ、危うく鍋を落としそうになった。
なんとか持ちこたえて急いで鍋を置き、そのまま流しっぱなしの水道水で冷やす。
見ると、第一関節と第二関節の間の皮膚が白くなっていた。
長さ1cm強、幅5mm程度の楕円形だ。

その夜、ふやけたような状態だった皮膚の下に浸出液が出てきて
水脹れとなり、2時間ほどもするとパンパンになった。
大きめのピーナツの粒の半分くらい、といったトコロか。
それが指の脇に張り付いていて、触ると奇妙な弾力を感じる。

この大きな水脹れは、2~3日そのままだったが
数日すると次第に張りがなくなってきた。
その後は日ごとに凋んでいって、ついには固い板のようになる。
表皮の下に溜まった血漿成分が固まったのだろう。

それにしても、日頃10kg近い荷物を鞄に詰め込み
片手で肩越しに背負って持ち歩いているというのに、
こんな場所にできたマメを潰さずにいられたというのは、
我ながら器用と言うほかない。

中身が完全に固まってくると、今度は少しずつ表皮が剥がれ始めた。
何かに擦るたびポロポロと落ちてしまうのが気になるもんだから
ピンセットで摘んで引き剥がしていたりしたら、下の塊が露出した。
まるで固まった膠のように透き通っている。

ちょうど1週間経った頃だったか、おそらく指の動きによって
「自家製膠」にヒビが入る(ひび割れた部分は白く濁るのでよく分かる)。
しかし、表面に残った表皮がそれぞれの断片に引っ張られたりして、
塊の周囲の皮膚に裂け目ができてしまう。

仕方ないので、断片を剥がす作業に取り組む。
ヒビのところに先の細いピンセットを突っ込んで軽くこじると、
けっこう簡単に剥がれてくれた。
せっかくだからと、調子に乗って完全に除去してしまおう。

ときたま残っていた皮膚が断片の周囲に繋がっているので、
無理に断片を引っ張ってしまうと自分で自分の皮剥きをする羽目になる。
ので、少しずつ断片を剥がしては、ニッパー型の爪切りで表皮を切り取る。
擬音で書けば、ペリッとやって、プチンとやる。それを延々、繰り返し。

それにしても火傷したのが右手でなくて良かった。
刃物はほぼ両手で扱えるが、左手でピンセットを扱うのは苦手なのだ。
あと、フォークやスプーンも左では苦手だ。
我ながら、なんとも不思議な手である。

ともあれ、患部の残留物は一通り除去し終えた。
下から、まだ再生されたばかりの柔らかい表皮が露出してきて
触れてみると不思議な感覚がある。
これはこれでちょっと楽しいのだが、まあ放っておこう。

火傷から2週間もすると、その感覚も気にならなくなってきた。
新たな皮膚は僅かに赤みが残るものの、周囲との見分けがほとんど
つかない状態だ。指紋のあるべき部分にも、ちゃんと新たな指紋が
できているのが判別できる。どうやら完治と言えそうだ。

火傷で水脹れまでに至ったのは久し振りだが、
しょせん軽い火傷だったから、さすがに治りも早かった。
そんな記憶も、こうして書いてみようと思わなければ
数年のうちに忘れ去られていたことだろう。火傷の跡とともに。

新陳代謝の早さは、それなりに自慢できるレベルらしい。
肌など「20代でも通用する」とさえ言われるコトもある。
大きな負傷も滅多になかったせいか、今も残り続ける傷跡は2箇所の手術痕だけ。
あとは、ほとんど消えてしまっている。

肉体だけでなく、精神的な新陳代謝も、けっこう活発だとは思う。
ストレスでボロボロになったりするコトも、ひとまず最近は減ったようだ。
大きな心理的傷病歴も、肉体と同じく多くはない。
傷跡のほとんどは消えたか、少なくとも普段は全く目立たぬ状態だ。

だが、今も残り続け、今後も一生残るであろう深い傷跡が、一つはある。
それでも一見、のんべんだらりと平和な日常をダラダラと過ごしているように見えたりする。
まあ実際、装ったり演じたりしてるワケでなく、たいてい普段そうなのだけれども。
……大悟は大愚の如し、というコトにしておこう。

とかなんとか、いろいろ書き物をする癖がついて、何年経ったかな。
こうやって記録をつけてみるのも、さすがに習慣化したようである。

まだ微妙に馴染んでいない点もありそうだが、いずれ分からなくなるだろう。

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