« 恨みっこなしょ | トップページ | 所持品紹介(10) メモリの奥深く、時間を止めたまま »

2007.11.22

半生紀(11) 夢の残像

20071122_epsn3150s


昔のメモを発掘したので、ほぼそのまま転記する。
日付は不明だが、妻を亡くした2~3カ月後のコトだろう。

----
ある日、仕事が長引き、会社で未明まで仕事をしていた。その後、眠気に耐えかねてソファで仮眠をとった。徹夜続きで疲れていたため、落ちるように眠りについたのだ。しかし、それだけ疲れていても、夢を見ることもあるらしい。

それは、河原の土手を自転車で走っていて、こねこを拾う夢だった。
非常に小さく、片手に収まるほどで、しかも拾いあげるとさらに軽い、茶色がかった虎縞のこねこだった。夢の中の情景は晴れていたはずなのに、私をみて草むらから出てきて恐がるよりも何かを求めるようにすがりついてきたはずなのに、そのねこは私の手の上で震え、ただ哀れっぽく泣きつづけていたのだ。目ばかりが目立つ、アンバランスなほどに頭の大きなこねこだった。

目覚めたとき、なぜかせつない想いに駆られた。体は冷えきり、しかも空腹であった。昨日は食事もほとんどとらず、缶コーヒーと煙草と、それだけで動いていたのだ。朝の冷たい空気の中、空きっ腹を我慢し、軋む関節をむりやり動かして駅まで歩きながら、ふと気付いた。

あのねこは妻ではない。私だ。
なにか確信するものがあった。

空腹で、体も冷えきり、ひょっとしたら病気になりかけかもしれない。明らかに何もかもがよくないことだけはわかっているが、体が訴える不調がどのような意味か理解できず、どうしたらよいかも、まだ知らない。かといって頼るべき相手はいない……
まさに、今の私の心だろう。虎のように強がってはいるものの、強そうに見せているものの、その心の中身はちっぽけな、ねずみにさえ負けてしまいそうな、哀れなこねこにすぎない。頼るべき相手も今は亡く、どうしたらよいのか、まるでわからない。ただ、泣くしかないのだ。

夢の最後の残像が、まだかすかに残っている。私は、そのねこを拾いあげ、どうすることもできないまま立ち尽くしていた。こねこが泣きつづけるあわれっぽい声が、さみしがって私に甘えてくるときの妻の声と重なり、いつまでも響き続けるのだった。

|

« 恨みっこなしょ | トップページ | 所持品紹介(10) メモリの奥深く、時間を止めたまま »