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2008/01/03

たまには時事ネタ(4) 無能細胞

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組織細胞から脱分化させて作った万能細胞は、さまざまな細胞に
変化でき、組織を作れるため、再生医療などに役立つとして期待される。
それを作り出すコトに成功したという研究成果は、
昨年の科学系ニュースの中でもひときわ注目を集めたものだ。

そして昨年末の「復活折衝」において、この万能細胞に関する研究を
支援するための予算が認められたなどというニュースも目にした。
国際競争力を云々すると言いつつも復活予算という扱いなのは、
実際には成果が出たから慌てて認めたというトコロだろうか。

こういう分野では、日本国政府は予算を出してもいいが、最先端を走る人たちを
後押しするだけに留めるのが無難なのだろう。少なくとも今の政府においては。
もし今の政府が舵を握ったら、最前線の人たちには迷惑なのではないか。
だから現状では、これでいいのかもしれない。とはいうものの……。

特に最近、政府に限らず日本中が右往左往しすぎてる感が否めない。
混迷の時代に翻弄され向かうべき先を見出せず思い悩むばかりであるようだ。
そも日本は昔から場当たり的、戦術戦法精神論頼みの風潮があると思う。
ビジョンや戦略を明確に立てず進めた結果、投資を無駄にするケースも少なくない。

しかも、そういう戦略的思考能力を鍛える教育も一向に行われないし、
組織体制も戦略的視点のないままに構築されているので、たまに一部の人物が
戦略やビジョンを持って加わっても、活動を強く阻害されてしまったりする。
要は、もっと知恵の働かせようがあるはずだのに、かなり重要なトコロが足りないのだ。

いずれ各論に触れる機会もあろうが、今回は象徴的なハナシを一つ。

先日、ある医師と話をする機会があった。
その医師は大きな病院で電子カルテシステムの構築や業務改善に携わる中で、
国主導のデータ標準化作業が全く機能していないのに気付いた、と驚きを込めて語った。
理屈の上では、標準を用いればシステム構築費用を大幅に抑えられるはず。

実際、その医師たちは、国が進めている標準化作業の成果を採用するつもりだった。
が、試してみたところ、とても現場では役に立たぬモノだと分かったのだそうだ。
国の標準規格は、言うなれば骨抜きにされていたのである。
その骨抜きをしたとみられるのは、一部の医療関係の業者。

彼らは標準化作業に深く関わりつつ、そこで抵抗勢力となっている。
データが標準化されれば、病院にとって業者の入れ替えが容易になる。
要するに、彼らは囲い込んだ顧客病院を手放したくないのである。
(過当競争がサービス品質の低下を招くという考えもあるようだが)

一方、会議で手綱を握っているはずの官僚たちは計画の進捗を把握できていない。
医師は、ある官僚から「できていると思っていた」と言われたそうだ。
どうせ2~3年で異動になるからと、腰掛けの仕事をしているのか。
また、そのせいで業者からも甘く見られているのではないか。

官僚の生態は詳しく知らないが、ポストを転々としながら昇進を重ねると聞く。
たしかに、頻繁な異動は組織内個人の不正の防止に役立つだろう。
しかし最近では、むしろ組織内集団や組織ぐるみの不正が目立つ。
いくら個人を異動させたところで、その不正は減らせまい。

異動後、万能細胞の如く置かれた立場に素早く適応してくれれば良いのだが、
しかしヒトがそんなに短時間で新しい環境に適応できるだろうか。
かつての、社会の変化が緩やかだった時代には、それでも良かったかもしれない。
だが今の世の中は変化が激しすぎる。間に合わなくなっているのではないか。

さらに言えば、個人的な不正を抑止する仕組みなら民間企業で
相当な工夫が重ねられており、それなりに成果を上げている。
一部の企業では経営層の不正を監視する試みだって行われているから、
次官級の不正だとて、ひょっとしたら抑止できるかもしれん。

だから官公庁にも同様の仕組みを作ってやればいい。
それは組織が世間から信頼されるようになるための戦略の一環だ。
そういう不正防止策を可能な限りに講じた上で、職員一人ひとりが
きちんと能力を発揮して結果を出せるような人事戦略を練るべきである。

忘れてはいけない。官公庁の存在意義は社会への貢献にある。
世の中からは「何ができるか」でなく「何をしたか」で評価される。
今や民間企業でさえ「不正をした」となれば社会的制裁を受ける時代だ。
公的機関なら、税金を食ってる分だけ余計に成果を出すべきではないかな。

さて。

万能細胞というのは、分化して組織に適合して初めて役に立つようになる。
適応できなければ、組織の活動に寄与するコトもできず、無能なままだ。
しかも、もしかすれば間違った適応をして悪性新生物と化してしまう危険もある。
そういうリスクを乗り越えて万能細胞を活用するには、やはり無能ではいられまい。

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