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2008.09.26

理系用語で読み解く社会(30) コヒーレントなヒトが礎石となった国家

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組織に対する帰属意識が高いと、
ときに沈みかけた船を立て直したりすることもある。
逆にそれがないと、人々は沈みかけた船を見捨てて
我先にと逃げ出していってしまうことだろう。

高い報酬も、あればあるに越したことはないが、
企業ではずいぶん前から人件費を削っていて、
自治体や官公庁も同様の措置を迫られている。
今の時代、少なくとも報酬という点においては
強い帰属意識を職員に求めることが難しい。

組織はどのようにすれば職員の帰属意識を高められるのか。
その課題を考える前に、少し違った観点で見てみたい。

組織が構成員の高い帰属意識に支えられた状態は、
しかし長続きしないような気がしてならぬ。
何といっても人材の育成が難しい。
その組織に対する評価が高まるにつれて、
入ったあとの活躍を目的とするのでなく、
その組織に入ること自体が目的となってしまう。

言うまでもなく、
入るだけが目的だったような人材ばかりになれば
帰属意識もネガティブな特権意識となってしまい、
組織は全体として内向的になり衰退へ向かう。

それを社会全体でやっていたのが、
たとえば戦後の日本社会ではないだろうか。
すなわち組織の人材獲得手法が
教育全般に大きな影響をもたらし、
それが各組織にフィードバックされるような……。

世界の一部分には、それぞれ固有の時間の流れがある。
空気というのは、その時間の流れのコトでもある。
だが、ときに社会の各階層の時間の流れが揃うと、
特に個々人の成長と社会全体の変化とが同期したとき、
興味深い現象が発生するのではないかと考えた次第。

ここ100年ちょい、日本の社会というのは、
たまたま位相が揃っている時代が多かったようだ。
たとえば維新後の近代化。
たとえば関東大震災後の復興。
たとえば敗戦後の高度経済成長。
おかげで世代ごとの性格付けも容易だったりする。

もちろん他の国も似たようなトコロはあると思うが、
特に近代日本の場合は、
組織への帰属意識の高まりであったり、
世代ごとの時代への適応の強さであったり、
いろいろな面で時代と世代とが
強く共鳴をしていたのではないだろうか。
そしてコヒーレントな光は強烈な影響を世界に及ぼした。

これこそミステリアスなまでの力を持った
国だった所以ではないか。

しかし、さすがに最近はノイズ成分が増えてきた。
いよいよ音程が狂い始めたような印象だ。
これは経済環境の変化などの影響なのか。

巨視的には均一な素材だった基質が不均質になり、
これまでは完全に溶け込んでいたものが
徐々に分離して凝固したり析出したりして、
教育という触媒を経た反応生成物の段階では
大きく異なる物質が混在するようになったりする。

あるいは社会全体を固体だとすれば、
不純物が析出しやすい結晶粒界に
いつしか大きなバンドギャップが生じてしまい、
抵抗値が急激に増大したようなものだろう。
終いには粒界に出てきた不純物が増えすぎて
結晶どうしの接合さえも覚束なくなり、
いつしか固体は一つの固体でなくなりそうなほど。

そして今や、出力される光も、
位相どころか波長さえバラバラになってしまった。

今後の日本において、波長や位相を揃えるほどの
大きな影響を及ぼす事件は、簡単には起きないだろう。
そもそもそれは揃わぬ部分を切り捨てるコトでもあって
ヒト社会においては常に大きな悲劇も伴うものであるから、
避けることが可能ならばそれに越したことはない。

とはいえホワイトノイズになってしまっては
無駄が多すぎて多くのデメリットが考えられる。
分散した波長を、位相を、再び揃えるには
果たしてどのような方法が考えられるだろうか。
それも、できれば可能な限りソフトな方法で。

そのあたりが今後の時代の日本列島に棲息する
ヒトビトの大きな課題になるかもしれんよ。

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