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2009/09/25

そのはしわたれず

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深い谷間を縫うようにして国道と鉄道が併走してゆく。
途中から徐々に工事現場が増えてくるように思われる。
ダムや湖を回避する新たなルートを作っているのだろう。

工事区間が一段落した先には、狭い峡谷の区間が続く。
渋滞でノロノロ進んでいたので周囲の景色を眺める余裕
はあったが、駐車場探しに一苦労しそうな気配でもある。

峡谷の終わるあたりが件のダム本体の建設予定地らしい。
風光明媚な峡谷を残す目的もあって、当初の計画よりも
谷の奥へと、その建設予定地は移されたとのことである。

予定地の手前、峡谷散策路へ通じる小さな駐車場の前を
通り掛かったとき、偶然、そこを出る車が目の前にいた。
咄嗟に、その車に道を譲り、空いた場所へ車を入れる。

駐車場周辺を少し散策してみればまさに深く狭い谷間。
春には花が、夏には涼感が、秋には紅葉が楽しめよう。
そして、これだけ深く狭い谷ならダムの効果も高かろう。

国道沿いに少し歩くと本体工事予定地の看板があった。
ここから上流の峡谷を最大限に活用する規模らしい。
水没する区間も長く、ダム湖の規模も大きなものだ。

眼下の谷底を見下ろし、左右に連なる稜線を見上げて、
改めてその規模を実感する。なにせ看板の立つ国道も、
少し上を走る線路も、堤体の中腹に入ってしまうのだ。

付替ルートを遠くから作らねば高低差に対処できない。
通りすがり目にした大掛かりなループ橋は、まさに
短い区間で大きな高低差を稼ぐのに役立つものである。

いったん駐車場へ戻り、再び渋滞に入り込んで先へ行く。
水没予定となっている温泉街や周辺では空き地が目立つ。
石垣で造成された四角い空き地に曼珠沙華が咲いていた。

かつてそこに暮らしていた人々の生活は、もはや痕跡。

上下流を峡谷に挟まれ、わずかに広がる川沿いの平地。
ヒトは、そういう場所に安住の地を求める傾向がある。
建物が失せ原地形が見えた姿をみて、改めて認識する。

旧温泉街の先は再び峡谷になる。こちらは水没予定だが。
険しい谷に、昔はさぞかし交通に苦労したことだろう。
その不便を解消した道もまた、沈むかもしれぬ運命。

どうにか入れた広報館の駐車場からは、湖面上に架かる
予定の橋が、まさに工事途中の状態として、一望できる。
あの橋脚の高さが、ダム湖の深さを示しているワケだ。

国道の下には、まさに収穫を迎えた小さな水田があった。
この地に生まれ育った人たちの原風景に侵入した、橋脚。
それは、あまりに巨大で、容易には排除できそうにない。

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