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2010.03.11

役に立つか苦言かどうかは受け手次第(48) 「心証膨大」

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このところ「相手に伝わったメッセージ」を中心に考えている。
ヒトの脳は膨大な知覚情報から得たい情報のみを得る生物である。
本能や経験から導き出されたフィルタを用い、必要そうな情報だけ
抽出して処理していくようになっているのが、ヒトの脳だ。

明確に意図していようといまいと、人為に接したヒトは多くの場合、
そこから何らかのメッセージを読み取ろうとする傾向も、またある。
同種の生物に接したとき、その相手が敵か味方かを見極めるべく、
発達してきた機能なのであろうとは、容易に想像できるトコロ。

ところが、そこでしばしば陥りがちな罠があったりするもので、
明らかにヒトの脳で処理するには情報過多な現代社会においては、
これがしばしば「誤ったメッセージ」の弊害を生じたりしている。
とはいえ、現象を探っていけば、その回避のヒントも得られよう。

さて、今回は、一つの作り話から。

経済状況の悪化に伴う経営危機でコスト削減が至上命題となり、
断行するにはトップダウンの強いリーダーシップが必要だ――。
なんてハナシを聞いて、部下に怒鳴り散らした社長がいたとする。
大幅な経費削減となれば、どうしたって人件費の見直しも迫られる。

けど上司に怒鳴られながら、外注先に涙を飲ませて価格を下げさせ、
品質や安全性が損なわれるかもしれないと知りつつ材料や工程をケチり、
節電で薄暗く壁紙の補修も先送りで貧乏感たっぷりの事務所や工場や倉庫で
必死に仕事して、その努力の見返りとして、部下が得るのは収入減か。

仮に一律で1割の報酬カットをして率先垂範だーなんて、社長が考えて
いたとしても、社長報酬の1割減と平社員あるいは派遣社員やバイトの
1割減では意味合いが全く違う。社長はそこに気付いている必要がある。
でないと間違いなく、間違ったメッセージが、部下に伝わるはずだ。

「そうか、社長は部下の連中を暮らせなくするつもりなんだ」――。
従業員のモチベーションやモラルは1割どころでなく下がるコトだろう。

解決のヒントになるかと思えるのは、先日あるコンサルから聞いた話。
全体のコストダウンを図りつつも、部分的には報酬アップとなる方策。
コンサル氏はアウトソース先について、改善成果の大きいトコロに対し
業務を集約させ、全体の対象企業数を減らす方策を提案していた。

そのまま従業員に適用するのは別のメッセージが混入しがちなので
(どんなメッセージかについては省略。各自適当に推測してください)、
こんな感じでどうだろう。あくまでも一例として。
まず全体としては1.5割減だが累進式で適用、現場で仕事をしていない
人たち、つまり管理職や経営層ほどカットされる率が高まる形にする。
それから、経営上の課題であるコスト削減に繋がる提案、活動について
一つひとつ吟味し、その内容や成果に応じる形で報償を与える。
この報償に使うための原資として、0.5割分を使う。
基本として、「上も下も苦痛を担う」「上手く行ったら報いがある」
というメッセージになればいい。もちろん、運用面の課題は残るが。

知恵を絞れと言いつつ、その知恵の例も示さなかったり、
そもそも知恵を出せる状況を作ろうともしないようでは、
おそらく受け入れられる上司の姿ではあるまいよ。
部下が受け取るメッセージは「敵対者」に近付くはずだ。

現実に見られる政治家と官僚の関係も、まあそんな感じだな。
高い理想を掲げて現実的な政策に落とし込んでいく政治家と、
それをさらに効率的効果的に実施していく官僚機構がほしい。
もちろん実際には、そんな理想的な関係は存在してないワケだが、
だとすれば適切な管理運用が為されない限りは、組織も動くまい。
そして政治家は巨大な官僚機構を、明らかに管理しきれていない。

だもんだから上から押さえつけるばかりで、どうにも成功しやしない。
シゴトしなくても問題を起こさなければ報酬が上がる、なんて具合に
誤ったメッセージを与え続けているもんだから、どうしようもない。
だから、着手すれば問題が生じる可能性のあるような新しい仕事に
どうして取りかかれようかと、そう思わせてしまっているのである。
新政策を実施せよ、行政改革をせよと命令したトコロで、動くまい。

結局のトコロ、関係者全員に問題があるのが現実の姿といえるだろう。
だから政治家も官僚も、そしてもちろん有権者たちも意識を変えねば。
組織を変えるためには目的を、そのためには意識を、変えねばならん。
たとえば、税金を収入として活動している企業だとは考えないのだろうかね。
そして住民と呼ばれる顧客たちと、より密に接する意図はないのだろうかね。
あるいは顧客たちの満足度なども、本気で考えたコトなどないのだろうかね。

顧客が、どんな相手と取引したいと考えているのか、についても……。
決して「オキャクサマ」なるカミサマを育てろとはいわない。
そして狡賢い連中に良い顔をする組織であってほしくもない。
むしろ賢い顧客と対等に付き合う、賢い組織であってほしい。
そんな感じのメッセージが、伝わっていくようになればいい。

※なお、今回の記事では、「各自で考えてくださいね」という
 メッセージを念頭に置いて書いております。

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