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2010/07/26

自称逸般塵の不通の日記(175) 借家ぐらしの或るオッサンの隣近所のトコロの公園

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近所の古民家が不審火により全焼して、1年半ほどになるか。
古民家といっても東京特別区の住宅街の中のコトなので
築80年だとか、その程度の古さでしかなかったのだけれども、
今は隣の家に住む元の住民が庭を植物で一杯にしていて、
建物そのものも大正末か昭和初期のモダンな風情だったので、
さる高名なアニメ監督が映画の舞台の参考にしたとかいう、
知る人ぞ知る散歩スポットではあったようではある、のだとか。

それを区が買い上げて、緑に埋もれた風情を維持しつつ
公園に整備するという計画が持ち上がった矢先の火事だった。
それが燃えてしまってどうなるコトかと思っていたのだが、
焼けたのは建物だけで庭木の被害は少なかったものだから、
区は計画を少し変えたものの公園整備という方針は維持、
建物の基礎や庭に残っていた手押しポンプ井戸などを保存し、
一緒に買い上げていた隣接の月極駐車場もアスファルトを
全部剥いで花壇やトイレや案内板などを設置して歩道を造り、
さらに仮設掲示板に進捗状況の写真を掲示してみたり、
とにかく色々な工事を並行して着々と進めていったのだった。

仕上げに行われたのが、昨日の開園式。

駅からの最短ルートは迷いやすいからか、途中には案内板も
設置して、10時開始の式の30分前から整理券を配って、
参加者には土産物に花の苗か何かをプレゼントするだのと、
まあ随分と手の込んだセレモニーを行ったという次第。
当然、大勢の客が訪れてきて騒々しくなるものと判断され、
近所の住民としては、あえて打って出るコトにしたのだ。
さもなきゃ、どっか他の場所へ逃げ出すか、どっちかだった。

人々が集まり始めた気配で出てみれば、隣の中学校にまで
ズラリと並んだ列。整理券を受け取るための列らしい。
貰ってみれば整理券というのは会場に入るための券ではなく、
式典後に花を受け取るための引き替え用だったりする。
そして会場は、というと校庭の半分くらいを使ったテントの列。
あの小さな敷地に何十人も入れないと思っていたから、
数百人にもなりそうな列に驚いたが、これで疑問は氷解した。
しかし猛暑日寸前の炎天下。テントの下も暑い、暑い。
時間に余裕があるので、いったん近所のコンビニまで避難して
ちょっと買い出しをしたりして、自宅に寄ってから戻る。
心なしか、コンビニあたりまで離れても人が多いような気もする。

戻ってみれば、さらに“人がゴミのよう”に増えていた。
局ロゴを貼ったTVカメラだのブームマイクだのを持った連中
なんぞも繰り出してきてるし、区長や区議長、地元の
有力衆院議員までセンセイ方一同が顔を揃えて座っている。
式典は案の定、その皆々様のリレートークが延々続く。
最後の方で、ほんのちょっとだけ喋った監督のときだけは、
いささか拍手の質が違っていたが、まあ当然だろうな。
中学校の吹奏楽部が出てきて映画のテーマ曲を演奏すれば
会場は手拍子でノってくる。これもまあ、普通だろう。

人が何を求めて来ているのか、よく分かる。

開園式の最後は、現場でのテープカットセレモニー。
関係者の中でも一部だけしか入れない狭い公園だというのに、
まあよくやるもんだと、ある意味で感心してしまった。
他の人々は公園を取り巻くようにして柵越しに、眺めるだけ。
式の後には花配りが行われたので、また校庭に行列。
どうやら行政は行列を作るのが好きらしい。一文字違いだし。

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そういえば、最初の行列のときだったかと思うのだが、
近所の人が立ち話をしているらしい声が雑踏の中で聞こえた。
「あんなに小綺麗にして……。全然変わってしまった」
といった話をしていたようだが、これには、ちょと同感である。
もともとの家の佇まいは、近所の住民として好きだった。
焼け落ちた後の、廃墟然とした様子も、決して悪くはなかった。
それこそ、家が焼けても緑あり、といった風情であった。
オープンした公園は、それでも一応は古びた雰囲気を醸し出す
ように工夫を凝らしているとはいえ、やはり「新しい」。
かつて保存を希望した住民たちにしてみれば、果たして本当に
これで良かったのだろうかと、疑問に思うかもしれない。

まあしかし、致し方ないのかもしれん。

だいたいにして行政というのは特定の個人や団体が完全に
満足するような施策を行うコトのできぬ組織であり、
むしろ利害関係者の誰もが完全には満足できないような
シロモノを作り上げるためにあるのだと、思うのだ。

もっと酷い存在にならなかっただけ、マシだよね、たぶん。

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