出張旅行記(44) 箱庭の世界の車窓から
8時ちょうどにはスーパーあずさ1号の車中で西へと向かっていた。
前に書いた「中央本線ルートで名古屋出張」の機会は思っていた
より早く訪れ、しかも日が長い夏至直後かつ雲も青空も出ている。
車窓を流れる景色を眺めたりしながらも、遅れている作業も行う。
とはいえ山また山の中央本線だもんだから、あんまり画面に集中
したりしていると酔ってしまうので、それほど捗らぬのであるが、
それでも少しばかりは直線区間などもあるので、やれるだけやる。
ときたま大月付近までは普通列車で散歩しに来ているのだけれど、
分水嶺を越えて甲府盆地に入る(しかも特急に乗って)というのは
もう何年振りかというくらいに久々で、ついつい見入ってしまう。
都内は小雨パラつく天気だったが、山梨県に入ると青空が見えて、
ところどころ雲に覆われた盆地は、向こう側の山々まで見通せる。
人間の営みのミニチュアを眺めているかにも思える、車窓の景色。
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「あをによし」と奈良盆地を好んだのは、一千数百年も昔の倭人。
どこか小さな枠の中に小ぢんまりと収まるのが、この島国の流儀。
ふと、視線を落とせば肘掛格納型のテーブルに収まった仕事道具。
ついつい身近な狭い世間ばかりを意識してしまって、その外側に
あるはずの広い世界を、普段は忘れてしまいがちなのが日本的で。
良くもあり悪くもある島国根性なら、せめて長所を生かしたいね。
盆栽を大地に植えれば大きく育つだろうが、可愛くなくなるもの。
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